お茶コラム

「新茶前に『蔵出し生茶』を。それが私の新茶の愉しみ方。」

2019年02月14日 18:59

石松園の高野です。

ここ最近人気の茶に「蔵出し生茶」という茶があります。

もともとは新茶時期に「荒茶(あらちゃ)」を、自分なりの解釈から「生茶」と呼んで販売し始めたことにはじまります。

チャの木から摘まれたばかりの葉は、みずみずしい生の状態。
この生葉に秘められた味や香りを引き出しつつ、
保存が利くように加工・包装されたのが、一般に売られているお茶です。

生葉が店頭に並ぶ茶葉になるまでの加工工程は、大きく2つにわけることができます。

一つ目は、茶畑に比較的近い茶工場で、摘んだ葉を揉んだり乾燥させたりする一次加工。
この工程でつくられるのが「荒茶」です。

二つ目が、「荒茶」を素材に茶葉の形を整えたり、さらに乾燥させたりして商品に磨き上げる工程。
これによってできるのが「仕上げ茶」です。
通常 お茶屋で、デパートで、スーパーで販売されているのはこの「仕上げ茶」です。
「荒茶」は、「仕上げ茶」の元となる原料の状態なのです。

この仕事に就いたばかりの頃はそんなことは全く知りませんでした。
そして新茶期に、荒茶のこの時期にしか感じることのできない生々しさ・瑞々しさを知った時、
「初めて味わった感覚」にとても感激しました。
そして「生茶」と名付けて販売を開始しました。
生々しさや瑞々しさが味わえると同時に、
茶の茎や芽や葉や粉など全ての部位がそのまま入っており、
淹れた茶も茶そのものを感じられる濃くてしっかりとした味わいであるため、
お客さまにもとても喜んでいただくことができました。

しかし、この「荒茶・生茶」には短所がありました。
その年の夏前までしか販売することのできない茶であったのです。
それは先に述べた「仕上げ茶」は、仕上げることで保存が利くように加工されているのに対して、
「荒茶」は新茶の生々しさを味わうことを目的につくっているため、乾燥度合いが弱く酸化による変質のしやすい茶であるのです。
そのため例年5月2日の八十八夜~6月いっぱいの期間限定販売とし、夏前までに飲んでくださいねとお伝えしていました。
しかしお客様からは「一年中飲みたい」というお声をいただきました。
特にこの茶は粉などもしっかり入っているため、水でもしっかり色や味が出るため水出し煎茶としての需要もあったのです。
そんな声にこたえるため、試行錯誤を繰り返しながら、火入れ乾燥方法をその時その時の気候条件に合わせてつくることで、
一年通して販売できる「生茶」をつくることができるようになりました。

今回ご紹介する「蔵出し生茶」は、その原料の状態の生々しく瑞々しい新茶一番摘みの茶を、最適な環境でひと夏ねかせた「茶」です。
通常販売している茶は、茎や粉を取り外して「仕上げ茶」として袋詰めしてお届けしますが、
「蔵出し生茶」は厳選した一番茶から何も取り外さずに、茶そのものの魅力を感じることができるこの時期おいしい「茶」です。

磨き上げていない分、見た目は少しおおざっぱな感じで、カッコよくないですが、
純粋で素直なとてもまっすぐな「茶」であると思います。
そしてそんな熟成した「蔵出し生茶」はこの寒い時期に熱湯で淹れて抜群においしいのですが、
またあたらしい八十八夜に「生茶」を飲むと全く違ったおいしさに出会い、驚きます。
そしてこれが、毎年繰り返している私の茶の楽しみ方です。

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