「深蒸し茶」とは? 新茶の基礎知識(6)
2020年04月27日 18:34
石松園の高野です。
今日はとても深蒸し茶らしい「深蒸し茶」が出来上がりました。
基本的には今年も新茶のスタートから「深蒸し茶」を製造していますが、今日できた茶は「超深蒸し茶」です。
「深蒸し茶」とは?
これはお茶が仕上がるまでの工程によるものです。
<お茶が仕上がるまでの工程>
<摘む>→<蒸す>→<もむ>→<乾燥>→<分別>→<火入れ>→<完成>
大まかに上記のような工程があります。
摘んだ生茶葉は、「酸化発酵」を止めるために最初に蒸します。
分かりやすく言うと、植物は葉をちぎって置いておくと空気にふれて酸化して茶色くなっていき、最後には腐ってしまいます。
それが「酸化発酵」です。
また、この「蒸す」という工程は、酸化発酵を止める役割だけでなく、お茶の味や香りも決める大切な工程です。
この<蒸す>という工程の時間が長いい状態で製造した茶が「深蒸し茶」です。
この写真は「蒸し機」です。
この機械の中央の長細い胴体の部分に茶葉を通して、蒸気で蒸していきます。
「浅蒸し」や「深蒸し」はこの蒸す時間の違いのことで、蒸し時間が短いのが「浅蒸し」、長いのが「深蒸し」です。
茶葉の形状という点では、蒸す時間が長くなることで「深蒸し」は葉が柔らかくなり、もむ工程で葉が砕けるために、細かい茶葉を含むのが特徴です。
「浅蒸し」は、逆に針のような細い整った茶葉が特徴です。
一般的に、「浅蒸し茶」の蒸す時間は「10秒〜30秒程度」、
「中蒸し茶(普通蒸し)」の蒸す時間は「30秒〜1分程度」、
「深蒸し茶」の蒸す時間は「1分〜3分程度」と言われています。
一番わかりやすい違いは、お茶を入れたときの色です。
「深蒸し茶」はにごりもある濃い緑色です。
「浅蒸し茶」は、黄金色のような薄い黄色です。
普段、深蒸しの煎茶を飲みなれていると、浅蒸しのお茶は薄いお茶と感じてしまうかもしれません。
味・香りについては、「深蒸し茶」は、渋みが少なく、甘味やコクがあります。特にこの新茶期は甘みがとても強く感じられます。
一方、「浅蒸し」は香りが高く、旨味があります。
歴史という観点でみると、「浅蒸し茶」の方が古く、江戸時代より前からありますが、「深蒸し茶」は昭和30年代になってからできた製法だそうです。しかし最近では、深蒸しの生産量の方が多く、販売されている煎茶の多くが深蒸し茶であると感じます。
「深蒸し茶」は、だれでも簡単においしいお茶が淹れることができるという特徴があります。抽出時間が短くても甘味やコクが出やすく、とても扱いやすい茶であると感じます。
また、茶葉が細かい「深蒸し茶」は、カテキンなどの栄養素が浸出しやすいため、ウイルス予防や免疫力アップなど健康面での効果効能も期待できるお茶であると思います。
「浅蒸し茶」は、お茶の抽出にも時間がかかり、おいしく淹れるために気を使いますが、香高く、その抽出する時間によって香りや味を調整して楽しむことができます。また、茶葉自体が大きいので、茶殻にポン酢をかけるなどして食べる場合に向いているのは「浅蒸し茶」です。
「浅蒸し茶」と「深蒸し茶」。
お茶は嗜好品であり、どちらが優れているということでなく、好みによって好きなものが分かれます。それぞれの特徴を知っていれば、その時々にあったお茶を楽しみ方ができるのではないかと思います。特にこの新茶期には、様々な茶が愉しめる季節であるからこそ、いろいろ試して自分のお気に入りを見つけていただきたいと思います。
引き続き、そんなおもしろい新茶の世界を、この新茶期という流れの真っただ中にいるからこそ!!という熱をもって、お伝えしたいと思います。