「秋の新茶」を。 お茶の定期便10月号。
2017年10月20日 17:19
石松園の高野です。
今週、今月の「お茶の定期便」の10月号を発送させていただきました。
今、飲んでいただきたいお茶とその気持ちをお送りさせていただきました。
そこにお付けした手紙です。
お茶の定期便(10月)
いつもありがとうございます。
日増しに秋の深まりを感じる今日この頃、皆様お変わりございませんか。
ここ数日の間に、急に冷気日ごとに加わるように感じます。
お身体ご自愛ください。
今月も、今 味わっていただきたい茶をお届けしたいと思います。
今月のテーマは「秋の新茶 第二弾」として、お送りいたします。
この時期は、春に摘んだ茶葉をこの時期にどう仕上げるかが茶師にとってとても大切な仕事です。
夏を越した今、茶葉はその内質が変化します。
旨味が増す茶葉、香りが増す茶葉など、ひとつひとつが時間を経ることによって、それぞれの個性が現れてくるのです。
この春の新茶期に出会った茶葉が成長し熟成されて、角が取れてまろやかになり、香りや味わいが深まるといった感じです。
そんなお茶を、秋の新しいお茶、「秋の新茶」としてお届けさせていただきます。
そして今回もそんな「秋の新茶」の中から、今こそ飲んでいただきたい「茶」をお届けいたします。
(1) 蔵出し 遠州森町産 深蒸し煎茶
今年の5月の定期便に「八十八夜新茶 遠州森町産 深蒸し煎茶」をお送りいたしました。
そこには、以下のように記しました。
『八十八夜、5月2日に摘んだ茶葉でつくったお茶です。
八十八夜とは、立春から数えて88日目にあたる農業節の一つです。
現行の暦では、5月1日か2日にあたり、今年は5月2日で茶業界では緑茶の日としています。
古来、八十八夜に摘まれたお茶を飲むと長生きできるという言い伝えがあります。
そんな八十八夜摘み静岡新茶を飲んで、一年間健康にお過ごしいただきたいと思います。』
今回は、その5月2日に摘んだ一番茶を、この半年間じっくりとねかせ、今月火入れ加工を行ったお茶をお送りさせて頂きます。
今年の春の若々しさが、熟成されて、角が取れてまろやかになり、香りや味わいが深まった姿を是非味わっていただきたいと存じます。
(2) 蔵出し 芽茶(めちゃ)
あまり聞いたことのないお茶の名前かもしれませんが、この茶は石松園の隠れた大人気なお茶です。
ツウ好みなお茶であるかと思います。
お茶を仕上げるという工程の中で生まれる副産物であるため、取り扱いのないお茶屋さんもあるかと思います。
この茶は「荒茶(原料としての茶葉)」から「仕上げ茶(製品としての茶葉)」へと製造する工程の中で生まれる茶で、
茶葉や芽の先端の柔らかい芯の部分を集めたお茶のことをいいます。
その見た目の特徴は、小さくてクルクルと丸かった形状です。
これは、茶の芽や葉の先端は水分が多くやわらかいために、自然に丸まりやすいためです。
また茶の芯の部分であるため、重いのもその特徴です。
「芽茶」を、淹れてみました。
「旨み」や「渋み」がどれも強く、淹れた茶の色も濃い緑色です。
これは、茶の芽や葉の先端部分には茶の持つエキスが凝縮されているため、この茶の風味は自然と力強く濃厚な味わいとなるということであると思います。
そのため、淹れる湯の温度を少し冷ますと「旨み」の強い、まったりとした味わいになりますし、熱い湯の場合は濃くなりすぎることもあります。
ただ、そのふた通りが簡単に楽しめるという点は「芽茶」ならではの持ち味であると思います。
(3) 蔵出し くき茶(棒茶)
茶の茎の部分を集め、つくるお茶が「くき茶」です。
またその茎が棒のような形状をしていることから「棒茶」とも呼ばれます。
煎茶を仕上げていく段階で、原料である荒茶(あらちゃ)から茎や粉の部分を取り除いてきれいにしていくのですが、その工程でできた茎を中心につくるお茶です。
今から60数年前、茶の甘み・旨み成分である「テアニン」茶樹内で、どのように生成し転流するかが注目され、「テアニン」の代謝に関する研究がなされたそうです。
その結果、「テアニン」は葉ではなく根でつくられるということがわかりました。
そこから一番近い「茎」には「テアニン」が豊富に含まれているというわけです。
そのために熱湯で淹れても、さわやかな旨味をおいしく飲むことができるのです。
季節の変わり目体調管理には十分に留意され、秋の夜長を一杯のお茶
とともにお愉しみください。
お茶の石松園 店主
この「茶の定期便」という企画を始めて三年目に突入致しました。
最初からずっと継続してお付き合いいただいている方は、もう三年間毎月お茶の文通をさせていただいているということになります。
定番として安心していただける茶をベースに置きながら、新鮮なその時その時の旬であるお茶を交えながら、誠心誠意気持ちを込めてお届けしていきたいと思います。