お茶コラム

お茶の基礎知識 3  「KING OF TEA ~お茶の王様~」

2013年06月15日 18:05

石松園の高野です。

今回は「基礎知識」 第3弾です。
お茶には様々な種類がありますが、今回はその中でも「王様」をご紹介したいと思います。

私の観点からすると、お茶にはそれぞれに個性が在り、誰が一番ということはないです。
例えば「番茶」は、お茶の世界では「下級茶」と呼ばれることが多いのですが、飲む人の環境や飲み方によっては、それこそがベストというお茶であると思います。
私はそれをつくる農家の方々にも、しっかりと伝えるように心掛けています。
1kgあたりがいくらという金額だけではない価値観。
これが「お茶の世界」には存在します。

少しそれましたが、今回のテーマは「王様」です。
それはこの「茶」という世界と歴史をつくってきた伝統と、今後の茶の世界をつくっていくであろうという2つの意味を兼ね備えた2種類の「茶」です。だから敢えて「王様」と名付けました。

それは、「玉露」と「抹茶」です。

茶の小売店の先輩方は言います。
「昔は玉露が本当によく売れたんだよ。そのためにたくさんのシールや缶をつくったものだ。だけど現在は全く注文がない。シールや缶がまるまる残っている。」と。
先日その先輩に、私のお茶の先生、尾村師範が今年つくった一番摘みの「玉露」を持って行って飲んでもらったら「久しぶりに本物のお茶を味わったよ。」と言って下さいました。

そして「抹茶」。
大手コーヒーチェーンも「抹茶ラテ」などの飲み方や「抹茶パフェ」などの形態に取り組み、この「抹茶」は世界にその存在を拡大しつつあります。

そしてこの2つの「茶」は驚くことに、同じ栽培方法で育てられるのです。
その後の製造方法は異なりますが、元は同じです。
今回の内容を是非知って頂きたいと思います。
日本が世界に誇れる「茶」を。

<栽培方法>
前回のコラムで記した「茶」の栽培方法と決定的に異なるのは、茶の新芽が出てから覆いをかぶせて日光から遮断します。
このことにより「茶葉」は旨みや甘みをその体内により多く蓄積することができるのです。

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※こも(わらを編んだ布地)をかけて遮光(日光をさえぎること)してつくるという昔ながらの手法

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※こもをかける作業はとても大変です。

近年では、寒冷紗(かんれいしゃ。化学繊維でつくられた布地)をかけることにより遮光する作り方が多い様ですが、私の先生、尾村さんは大変な思いをしても、わらを編んでつくった「こも」にこだわります。
尾村さん曰く『お茶も人間と同じ。自然のもの「こも」と化学繊維でできた「寒冷紗」では、急激な温度や湿度の変化に対して違いがある。
寒冷紗では中の温度が急激熱くなったり冷え過ぎたりということがあるが、「こも」はいい感じを保ってくれる。
そしてなぜだかやわらかみのあるお茶ができる。』と。

こもをかける作業はとても大変で、尾村さんはいつも「目汁・鼻汁でぐちゃぐちゃになるよ。」と言いますが、その昔ながらの変わらない栽培方法で茶の樹を育てます。それが「こだわり」です。

<製造方法>
「玉露」について。ここからは前回コラムの「茶」の製造方法と同じです。

「抹茶」は異なります。
抹茶の原料は「碾茶(てんちゃ)」という「荒茶」です。
蒸して「発酵」を止めることは同じですが、その後は全く違います。
大きな違いは水分を揉み出すという工程がなく、とにかくひたすら茶葉を熱風で乾燥させてパリパリの葉っぱにするというつくりかたです。

写真 (6)
※碾茶(てんちゃ)を作る最初の乾燥工程。下から熱風で茶葉を吹き上げて乾燥させます。

写真 (7)
※乾燥工程から出た茶葉

できた「荒茶=碾茶」はパリパリなおせんべいみたいな葉っぱです。

写真 (8)
※できたての碾茶(てんちゃ)

そしてこれを石臼で挽きます。

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挽く前には、茎の部分をとったり、引きやすいように少し茶葉を細かくするなどの準備をしてから行います。
そして、この石臼で挽くことこそが「抹茶」となりえる工程です。
石臼を24時間フル活動させても、実際にできる「抹茶」は300g~500gです。
それだけゆっくりと時間をかけて挽くからこそ、均一でなめらかな「粒子」になるのです。

写真 (5)
※碾茶(てんちゃ)と、碾茶(てんちゃ)を石臼で挽いた抹茶

石臼の先生が言っていました。「実は石臼で挽いたホンモノかどうかを見分ける簡単な方法が在る。粉砕したりする手っ取り早い手抜きな作り方をしたニセモノは茶筅(ちゃせん)で点てた(たてた)時、泡が立たないよ。」と。

「玉露」も「抹茶」も、その旨みと甘みが最大の魅力です。
そしてそれを表現する手間の中には、とても大変な時間と想いがあります。

そうしたホンモノとそこに詰まった想いを、しっかりと届けたいと改めて思うのです。

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