お茶コラム

世界にただ一つしかない茶とは・・・?

2013年11月19日 16:13

石松園の高野です。

写真1

石松園のお店の入り口に在る大きな暖簾を見て、初めて石松園にご来店されるというお客様が増えています。
そうしたお客様のおっしゃることには大体共通点が在ります。今日実際にあったお客様の声は、
「今は深蒸し茶を飲んでいるのだけど、香りが弱いのよね。」と「本山茶を飲んでいるのだけど、もっと綺麗な緑色のお茶が飲みたい。」
でした。つまり「自分に合ったお茶」を探していらっしゃるのです。上記した「深蒸し茶(ふかむしちゃ)」も「本山茶(ほんやまちゃ)」人気があるお茶です。そしてこの二つの「茶」は同じ「茶」でありながら、全く異なる特徴を持っています。「茶」とは嗜好品であり、その好みも人によって異なる飲み物であるということだと思います。
現在石松園で取り扱いさせて頂いている「茶」は、産地別・形態別・金額別に分けると100種類以上になります。
その中でもお客様の趣向によって、好みは分かれます。

そういったお客様に対して私はまず「どういったお茶を探しているか。」を聞きます。
例えば、今日の最初の例に出したお客様には「遠州森の改良手もみ茶」を飲んで頂きました。そしてこのお茶の「茶畑の写真」を見て頂きながら、この「茶」の説明をさせて頂きました。

写真2

すると、このお客様は写真を見たとたんに「霧のかかる茶畑はいいお茶が採れるのよね。」とおっしゃいました。そしてこの茶を飲みながら頷いておられました。そうなのです。この「遠州森の改良手もみ茶」の最大の特徴は、「山の香り」と「濃厚な味わい」なのです。そしてそれはこの茶が採れる「産地の特性」とその特性を生かすために長年の経験によってつくられた「製法の特性」によるものです。おそらくこの茶は「世界にただ一つしかない茶」であると思います。

では、この「森の改良手もみ茶」が他のお茶と違う点は何か?

1.川霧の立ち込める山頂の茶畑で栽培されているということ。
2.この山頂の茶畑は山の北側の斜面にあるということ。
3.「改良揉み」という製法でつくるため、山の香りや山の味がはっきりと現れること。

それぞれについて解説します。
石松園の茶畑は、標高500M以上の寒暖の差の激しい場所に広がります。
これらは一般的にも最高の茶が育つ環境と言われています。

写真3

まず「寒暖の差」がなぜいいのか?

茶葉も人間と似ています。昼の間、光合成という仕事をしてしっかり養分をたくわえます。夜は光合成(しごと)は行わず、昼間に合成した糖類を消費するだけです。よって、夜は気温が下がって、植物の活動が抑えられる方が、その分糖分は消費されずに植物内に蓄えられることとなります。それが、茶葉の「旨み」「甘み」となるため、昼夜の寒暖差が大きい分、茶葉の「旨み」と「甘み」が増すのです。

写真4

次に「川霧」がなぜいいのか?

ひとつにはお茶の最大の敵「霜被害」を防ぐという効果があります。先ほど述べた「寒暖の差」は必要ですが、気温が低くなり過ぎると「新芽」が凍ってしまうという被害を受けてしまいます。「川霧」はそれを防ぐ効果が在るのです。それは「川霧」には熱をもたらす効果があるからです。一般に川辺は、水の蓄熱性により暖かく、また風が局所的には強いため凍結しにくく霜が降りにくいという利点があります。風が吹く日は冷え込んでも余程のことがない限り霜も降りません。もうひとつには、「日照遮断効果」があります。「川霧」によって直射日光がさえぎられることで、茶の樹は光合成が出来にくくなります。そこで、茶の樹はより光合成が出来るように自分の葉の中に葉緑素を増やそうとします。このふやされた葉緑素が綺麗な緑色をつくりだしたり、旨み成分を生成したりします。また、直射日光の紫外線を浴びることで増える「カテキン」という成分の生成も抑えられ、逆に「テアニン」という甘み成分がしっかりと生成され、まろやかな味になるとも言えます。(これは以前のコラム「玉露」の栽培方法における「こも」の役割を「川霧」がしてくれているということです。)負荷を受けることで、苦難を乗り越えることによって、茶葉も自分が持つ本来の香りと味が出てくるのかもしれません。

写真5

なぜ「山の北側の斜面にあること」がいいのか?

ひとつには朝日が昇った時の直射日光の当たるかげんです。特に新茶の芽が出る4月は、朝晩はまだ冷え込んで日中はかなり気温が上がります。この冷え込みで、寒さで縮こまった新芽の細胞がこの朝日で解凍されるわけですが、南側だと朝日がガンガンにあたる中で一気に解凍されることとなります。それに比べて北側の斜面ではゆっくりじんわりと解凍されていきます。このことが茶の生育に好条件なのです。
もうひとつには日照時間の違いで茶葉の色にも影響があり、北側の方が色目がいいということもあります。

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「改良揉み」とはどんな製法か?

一般的に煎茶をつくる工程には以前のコラム(お茶の基礎知識2 「お茶が出来るまで。生産〜製造〜流通。」)でも少し触れていますが、最後に「精揉(せいじゅう)」という茶葉をピンと伸ばして整形する工程があります。この「森の改良手もみ茶」の製造工程にはこの「精揉」という工程が在りません。そのため見た目はくりくりと丸かっています。「形状」を重視する茶業界においては異端な存在だとも思います。でも、初代の濱吉おじいさんはこの製法にこだわったのでした。直接本人の口から聞いたことはないのですが、農家の方々のお話と自分の想像を合わせると「山の香り」と「山の味」へのこだわりではないかと思うのです。この地には先に記した2つの産地的特徴が在ります。これをさらに強く表すためのこの製法だと思うのです。

先日ある有名な茶農家の方が訪ねて下さいました。彼はまだ若い方なのですが、その「こだわり」と「情熱」で自信を持ってお茶づくりに励んでいらっしゃいます。その方も「こんな特殊なお茶を長年販売し続けているということ」に驚かれていらっしゃいました。そういう意味においては、この「遠州森の改良手もみ茶」も個性が強い分、飲む方の嗜好によって「好みの分かれる茶」であるとも言うことが出来ます。

長くなりましたが、最初のお客様はこの「遠州森の改良手もみ茶」の「山の香り」と「濃厚な味わい」を気に入って下さいました。私の頭の中では、もしお客様が「このお茶濃過ぎるわ。」とおっしゃった場合は「川根茶」を淹れるつもりでいました。私はこれからもひとりひとりのお客様の「好みに合うお茶」を探すお手伝いをし、「茶」を通して「喜び」をご提供したいと思います。

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