お茶コラム

抹茶の出来るまで。「碾茶~抹茶に加工」

2014年06月30日 16:01

石松園の高野です。 前回は、「抹茶」の原料である碾茶(てんちゃ)が出来るまで を描きました。
今回は前回の続編「抹茶」のできるまでの後篇です。 「碾茶」から「抹茶」に加工していきます。

コラム写真1

ここで大きなポイントは、「石臼(いしうす)で挽く」ということです。
基本的にはこれだけです。そして、このことこそが最も重要なことです。
工程で言えばこの前に「茎の部分を取り除く作業」と、 「唐箕(とうみ)という機械を使用し、
風力でクズやチリを選別して取り除く作業」があります。

いずれも不純物を取り除き、綺麗な葉の部分だけに磨き上げていくという工程で、
高品質な「抹茶」をつくるためには欠かすことのできない作業です。

さて、ここからが本題です。

最近では、様々な食品を粉末にして摂取するため、様々な粉末にする方法が在ります。
ただし、「抹茶」という粉末状の茶をつくるには「石臼(いしうす)で挽く」ということが絶対条件です。

この方法でなければ、「抹茶」と呼ぶことは出来ません。 その理由は大きくふたつあります。
(1)変質・変色を防ぐため。   (2)均一で滑らかな粒子にするため。
粉末状の「茶」をつくるには、機械・ボールミルを使用したりするなどして
茶を粉々にする「粉砕方式」という方法もあります。 この方法は「一度に大量に作ることが出来る」
というメリットがあります。
ただし、機械自体が熱を持ち、その熱が茶葉を通って茶葉を変質させてしまうというデメリットが在ります。
色が落ちたり、風味が飛んでしまうのです。 それに対し、石臼で挽くのには本当に時間がかかります。
24時間石臼を廻し続けても、できる量はほんのひと山です。 初めて石臼で挽いた時、
出来上がりの量のあまりの少なさにとてもガッカリした記憶があります。

ただ、この「石臼で挽く」という作業にはとても大きな意味が在ります。
石は鉄と違って熱を持たないため、熱で「色」や「風味」を変えてしまうということがないのです。
だから、綺麗なみどり(青)色で、風味豊かな「抹茶」が出来上がるのです。

コラム写真2

また、石臼の場合は、時間をかけてじっくりと粉状にしていくため、 粒子がとても細かく均一な粒子になります。
粉砕した場合は、ムラがあり均一ではありません。
均一でないと点てた時に、溶けきらない粒子がこずんだり、泡が立たなかったり、
口にした時に喉の奥に残るような感覚が残ってしまいます。

コラム写真3

こうして今年一番摘みの碾茶を挽いた「抹茶」の出来上がりです。 挽きたてはとてもフワフワしています。
そして新茶ならではのフレッシュな「香り」と「味わい」が在ります。
そして、これはこの時期にしか感じることのできない特有のものであると思います。
この初夏に仕入れた碾茶は、アルミの袋に真空パックにして、冷蔵倉庫にて保管します。
一般的な「茶」ももちろんそうなのですが、特に「抹茶」や「玉露」のような遮光栽培した茶葉の場合、
この保管期間における変化は驚くべきものがあります。

夏を越して秋が深まってこの袋を開封してみると、 先に述べた「フレッシュな茶」が、
「奥行きのある、深みのある茶」に変貌しているのです。
これは「香り」においても「味わい」においてもいえることです。

茶の世界では「口切りの茶事」といって、初夏に摘んだ茶葉を茶壷に詰めて、山で寝かせ熟成させ、
炉開きの頃(11月)に山人が茶人のもとに届けるという儀式があり、現在でもこの茶事は行われています。
こうした古くから伝わる儀式や言い伝えには意味が在るのだなと改めて感じます。

私の「茶」の師範である尾村さんも 「古来、玉露という茶は、
三年寝かしてやっとその茶本来の魅力を引き出せると言われたものだよ。
茶をどのタイミングで出すのが最善であるかを見極める力が必要だ。」とよくおっしゃいます。

こうした「茶」の変化はどちらがいいとか悪いということでなく、
それぞれに特徴が在り、改めて「茶」の奥深さを感じさせてくれます。
石松園では、「抹茶」については鮮度を重要視しているため、その都度必要な量だけ石臼で挽くようにしています。

また、先に述べた「熟成」という観点から、茶葉の保存も行っております。
一種類の「茶の樹」が、栽培方法や製造方法やつくる人によって無限の変化を遂げ、
またさらにカタチにする時期やタイミングによっても拡がりをみせるのです。

こうした「茶の世界」を、これからもお伝えしたいと思います。

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