石松園銘茶本舗「仕事の流儀」
2014年08月11日 14:59
石松園の高野です。
昨日とても嬉しいことがありました。
教科書などを販売する会社の営業マンで、もう何十年と出張の度に石松園にお茶を買いに来てくださる
お客様がプライベートで奥様とお茶を買いに来て下さったのでした。
話によると「つい先日仕事を変えたので、出張でこの街に来ることもなくなってしまった。
電話やメールでお茶を頼んで送ってもらえることはわかっていたのだけど、店に来てお茶を買いたかったんだよ。」ということでした。
彼のお住まいは神奈川県です。車で2時間かかる距離です。本当にうれしく思いました。
私の仕事は「お茶屋」です。
農家の方から仕入れさせて頂いた「茶葉」を製造し、販売させていただいております。
良質な茶葉を吟味し、その茶葉としっかり向き合い、その個性を最大限に引き出す製造をすることが大切な仕事です。
また、その茶をしっかりと伝えることができる様にパッケージも考えます。
そして、もうひとつ大切な仕事があります。それは「感動をあたえる」ということです。
なんだか大げさで、夢のような話かもしれません。でも真剣にそのことを考えています。
お店に来て下さったり、通信販売で購入して下さるお客様はもちろん、茶の小売店、菓子店、飲食店、ホテル、
観光地売店など様々なお客様にものすごく喜んで頂きたいのです。
例えば、「お茶離れ」という言葉に惑わされ、茶が売れないと思い込んでいる茶の小売店の親父さんや、
本物のお菓子をつくりたいと心から想い努力するお兄さんの気持ちを押して、共に一歩前に進みたいと思うのです。
そこで、本日のテーマは「抹茶」です。
現在、「抹茶」は、そのものを愉しむのはもちろん、食材としても様々な用途に利用されております。
世の中いたるところに「抹茶フレーバー」はあふれています。
しかし、この「抹茶」について、その正体はあまり知られていないのではないかと感じています。
私は仕事柄、様々な「日本茶専門店」の方とお話をさせていただく機会があります。
「茶」に関しては、みなさん強いこだわりを持たれており、「今年はここの茶葉が良かった。」であるとか、
「今年は茶の価格は全体的に高いね。」であるとか、「こういう火を入れるといい香りが出るんだよ。」などと具体的で情熱的です。
しかし、こと「抹茶」に関しては、「ずっと○○のをつかっている」であるとか、
「○○産のをつかっている」という感じで、「茶」のときのような力強さがありません。
実は10年ほど前、私が初めてこの石松園で「茶」に関わる仕事を始めた時、この石松園もそうでした。
全国の有名百貨店に並ぶ抹茶と同じ銘柄の缶入りの「抹茶」が並んでいたのでした。何となくそのことに違和感を感じ、
勉強し、様々な生産地へ出向き、比較検討し、失敗し、現在の「抹茶」へと辿り着いたのでした。
「茶」を理解するということにおいて、比較検討するということはとても重要なことです。
目の前にある一杯の茶を飲んでおいしいと感じても、二種類のものを並べて同時に飲んでみると違って感じるということはよくあることです。
また、これまでも何度かこのコラムでもふれましたが、「抹茶」には絶対条件が在ります。
ひとつには、「遮光栽培された茶葉であること」、もうひとつには「石臼で挽いた粉末状の茶であること」です。
菓子職人さんやパテシィエさんから「抹茶を使ったのに色が悪い。」と相談を受けて見させていただく「抹茶」の
ほとんどはそのどちらかの条件を満たしていないことが多いです。
最悪な場合、両方満たしていないという場合もあります。
また、最近では、色の落ちない抹茶と称して色素やクロレラなどを配合したものもあるそうですが、
そうなるともはや「抹茶」ではありません。
石松園では、いつ・どこで・誰が・どのように、栽培し、製造したかを全て把握し、「抹茶」を取り扱っております。
そのため、お客様の要望に合わせて「抹茶」をご提供させていただいております。
例えば、今年は現在までで、2回茶葉を摘みました。今年摘んだ茶葉で製造した「抹茶」は色味も風味もフレッシュです。
それと比較し、昨年摘んだ茶葉で製造した「抹茶」はフレッシュさはなく独特な重厚感のある色味と風味があります。
これは使われる方の好みによって、どちらを選択するかということになってきます。
先日も、お取引が始まって半年の、ある和菓子屋さんから嬉しい電話を頂くことが出来ました。
「これまでは加工用の抹茶しか知らないからそれを使っていたのだけど、
飲む用の抹茶は色も風味も素晴らしいね。お客さんも増えたよ。」とのお話でした。
「抹茶」に加工用も飲む用もないかと思います。あるのは、良質な「抹茶」とそうでない「抹茶」です。
それをたくさんの方に知って頂きたいと思います。