お茶コラム

本物の「抹茶」とそうでない「抹茶」の違いとその作られ方

2013年05月30日 09:52

石松園の高野です。

今日はお店に来て下さったお客様との話から出来そうな新商品の話をお届けしたいと思います。

石松園の人気商品でここ数年メキメキと頭角を現している商品があります。
それは「抹茶」です。世界的にも拡がりを見せる「抹茶」。
「抹茶」が人気なのは、茶器がなくても扱えたり、渋みが少なく甘くて飲みやすい、いろいろな食材と相性がよい、そして茶葉を丸ごと体内に摂取することができ健康的であるからなどの複数の理由からだと思います。

お客様が焼いてくださった「抹茶のシフォンケーキ」
写真 (6)

2013年5月12日、焼津グランドホテルの洋食部門の方から「今度の週末に宿泊されているお客様に、せっかく静岡県に来て下さったのだから、新茶の抹茶のデザートを食べて頂きたいのだけど新茶の抹茶ある?」と相談を受けました。

茶業界においては初夏に摘採した茶葉でつくる碾茶(てんちゃ。抹茶の原料。)は茶壷に入れて、ひと夏熟成させて「口切りの茶事」という一大行事の際に石臼で挽くというならわしがあります。

写真 (8)

ということからすると「新茶の抹茶?」ってことになるのですが、不可能はないのです。

すぐに私のお茶の先生であり、藤枝市岡部町朝比奈で世界一の玉露を60年以上作り続ける86歳尾村師範に連絡しました。

「明日、家においで。」とのことでした。
お伺いすると「じゃあ、行こう。」とさらに山深い「青羽根」という土地に向かいました。
するとそこにはホンモノを作っているというニオイが充満する「碾茶工場」がありました。
そこで工場を見せていただいたり、いろいろな話をして今年度一番茶で生産された「碾茶」をその場で仕入れさせて頂きました。

そしてすぐに「抹茶」にするためある家に向かいました。
この方の家には自分でつくったという石臼が10台あって「それを使って「茶」や「そば」を挽くというのが私のしごとだよ。」と言いました。
仕入れた碾茶をお願いしました。

写真 (7)

ただホテルへの納品日はすぐだったので、ホテルの分は石松園工場にあるちいさな石臼で挽くことにしてその分は持ち帰りました。
石臼で茶を挽くという作業はとても時間のかかるものです。
茶葉にもよりますが、24時間フル稼働で石臼に頑張ってもらってもできる製品の量は300g~500g程度です。
しかし「抹茶」は石臼で挽かないと「抹茶」とは呼べません。
悲しい事実ですが、世のお茶屋さんで「抹茶ではないモノ」を「抹茶」として販売しているケースはとても多いのです。
私は何度かそれを実際にみてしまいました。販売している人もそうとは知らずに販売しているというケースもあります。

ここで、「抹茶」とは何かについてご説明したいと思います。
少し長いですが、お付き合いいただければ幸いです。

■「抹茶」の栽培方法
一般的な「茶」は自然の日の光を浴びて生育しますが、「玉露」と「碾茶(抹茶の原料)」だけは栽培方法が異なります。
芽が出た茶の樹を日光からさえぎって栽培するのです。こうすることで茶葉の甘み・旨みが増し、茶葉の色も何とも形容しがたいキレイな緑色になります。
そしてこの遮光(日光からさえぎること)には古くからわらを編んでつくった菰(こも。わらを編んだゴザみたいなもの。)を茶畑の上にある棚にかけて、さえぎります。

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尾村さんがつくる「玉露」はこの栽培方法です
。最近では化学繊維でつくったネットの寒冷紗(かんれいしゃ)をかけることの方が多いです。
これは、とても便利でかける作業も楽です。

ですが、尾村さんがたいへんな思いをしても「こも」にこだわるのには理由があるのです。
尾村さん曰く『お茶も人間と同じ。自然のもの「こも」と化学繊維でできた「寒冷紗」では、急激な温度や湿度の変化に対して違いがある。寒冷紗では中の温度が急激熱くなったり冷え過ぎたりということがあるが、「こも」はいい感じを保ってくれる。そしてなぜだかやわらかみのあるお茶ができる。』と。
こもをかける作業はとても大変で、尾村さんはいつも「目汁・鼻汁でぐちゃぐちゃになるよ。」と言います。
だかろこその本物です。

■加工方法
摘採した茶葉を、一度蒸して発酵を止めて、大きな「炉」で乾燥させます。
一般的な「茶」は揉み(もみ)ながら水分を除去し、製茶していきます。
「碾茶」はただ乾燥させるという工程だけです。出来上がった碾茶はパリパリのおせんべいみたいな感じです。
その碾茶の茎の部分を取り除き、きれいに均一に挽けるように準備します。そしてそれを「石臼」で挽いたものが「抹茶」です。

長々と書きましたが、これこそが「抹茶」なのです。先ほど書いた悲しいニセモノとは、遮光していない茶葉を使用していたり(渋みが感じられる。色目が青々としていない。)、石臼で挽いていない(均一でなめらかな粒子にならない。湯で溶かした時にこずんでしまう。)などの製品です。

そして何とかその週の週末ホテルのデザートにその抹茶が加わり「新茶の抹茶ムース」が出来上がったのでした。

そして石松園では、この一番茶抹茶を使用して「抹茶入り玄米茶」をつくりました。

写真 (5)

「新茶」に「玄米(ヒヨクもち米を焙煎したもの。玄米屋さんに相談して選んだ最高級なぷりぷりな玄米。)」と「はな(玄米をポップコーンみたいにはざしたもの。)」そしてこの新茶の「抹茶」を加えました。

そして先日ご来店されたお客様。30代前半(石松園のお客様の中では若い方。)。
「本当においしかった。アイスもおいしかった。」と言って下さいました。「アイス??そうか、バニラアイスに混ぜてもきっとおいしいな。玄米はそのまま食べてもおいしいし、茶葉も深蒸しの細かい茶葉を使ったから体にもいいな。」と思いました。
そして「混ぜたのですか?」と聞いたら、「え?水で淹れて冷たくして飲んだ(=アイス)のですよ。」と。

そして彼に私は言いました。「勘違いしたのですが、おそらくその方法(バニラアイスに混ぜる食べ方)もおいしいと思います。」と。
すると、そして今日彼が来店して下さいました。「バニラアイスに抹茶入り玄米茶を混ぜたら、本当においしかった。ジェラートのように、アイスクリームと茶を混ぜ合わせてみた。食べると玄米をかんだ瞬間に香ばしい香りが口に広がった。」と。

偶然から生まれたアタラシイ発見でした。私もやってみます。

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