石松園の新茶の仕入れ「牧之原1」
2013年05月28日 09:29
石松園の高野です。
前回は静岡県「遠州森町」という茶産地を取り上げましたが、今回は静岡県「牧之原」という茶産地です。
牧之原市は静岡県の中部地区の南に位置し、牧之原大茶園を背に、東に駿河湾を望む緑豊かな街です。
ここに「カネジュウ農園」さんという茶の生産家があります。
昨年の新茶前にここの渡辺さんと出逢い、今年2回目の新茶の仕入れをさせていただきました。
彼は私よりも若いのですが、もの凄い情熱を持ってお茶づくりに取り組まれています。
緑茶生産はもちろんのこと、発酵茶(紅茶や烏龍茶や釜炒り茶)やノンカフェイン茶など様々な挑戦をされています。
そして彼も私同様、以前は全く違う職業していてこの茶業界に飛び込んできたという経歴の持ち主です。
今年は3月暖かい日が多かったことにより、静岡県の温暖な気候の地域の摘採は例年と比べ本当に早く始まりました。
この「カネジュウ農園」さんでの新茶第1号は、昨年は4月22日の朝3時頃に産声を上げました。
それが今年は4月13日の同時刻でした。9日間も早かったのです。
ちょうどその2日前にカネジュウ農園さんの茶畑を見せてもらいに伺って、いろいろ教えて頂いていたのですんなり「新茶」の仕入れ・販売に突入していくことが出来ました。
この地のお茶は「遠州森町」のそれとはまた大きく違います。もしかしたら180度異なる魅力を持っています。
最近ではよく耳にする「深蒸し茶」がこの地の茶の特徴です。
「深蒸し茶」とは何か?茶葉は摘んだまま置いていくと自分の体内に在る酸化酵素のはたらきで、自分の体内のカテキンという成分を酸化していくという性質を持っています。
それを止めるために摘んだ茶葉を蒸して発酵を止めるのですが、その「蒸す」という工程の時間が長いか短いかで茶葉の形状が変わってきます。
時間が短いと「浅蒸し茶」といって茶葉が大きく、淹れたお茶の色もやまぶき色(黄色っぽい)でやわらかな風味のお茶になります。
時間が長いと「深蒸し茶」といって茶葉は細かくて、淹れたお茶の色はきれいなグリーンで成分もしっかりと浸出されます。
ただこれは好みの問題なので、どちらが優れているということではありません。
どちらのお茶にもファンがいるのです。また産地によってもどちらに仕上げるかという傾向があります。
人間と同じように、それぞれにそれぞれの良さがあり、それが「個性」だと思います。
そしてこのカネジュウ農園さんのお茶は「やわらかな新茶の香り」と「甘み」が抜群です。
そして香りも甘みも遠州森町の山の香りと山の甘みとは全く違うものです。種類が違うものです。
わかりやすく言うとすれば「遠州森町」は男性的で、「牧之原」は女性的な感じがします。
ただこれは私の表現であるので、人によっては全く違う感じ方もあるかもしれません。
そしてこれこそがお茶のおもしろさであると私は思うのです。
同じ日本の静岡県と言う地域で同じ「チャ」という植物を生産しているのに、「つくる場所によって」「つくる人によって」全く違う香りや風味を持つ「お茶」が出来上がるという魔法。
現実的に隣同士の茶畑でもつくる人が違えば、全く異なる「茶」が出来上がります。
またもうひとつおもしろいことは、同じ茶畑で生産されている茶葉が摘んだ日によって少しずつ変化していくということです。
次回はそのことを描きたいと思います。