お茶コラム

石松園の新茶の仕入れ「遠州森町2」

2013年05月27日 10:27

石松園の高野です。

石松園のメインのお茶「森の改良 手もみ茶」をつくっている場所については前回のコラムで紹介させていただきました。

今回はそれをつくって下さる人にスポットを当てたいと思います。
「木根」という土地にある「木根共同組合」という茶農家の集団です。と言っても現在は主に2件の農家で構成されています。
一昨年までは4件だったのですが、そのうち2件は91歳と80歳のおじいさんで「からだがエラい(大変)。」とやめることとなりました。
現在は花島きよこさんと花島義久さんの2件です。きよこさんもおばあさんなのですが、私と同世代の3人の息子さん達が手伝ってくれています。
義久さんは65歳でバリバリです。農家の方々は身体をフルに使っている分元気だなといつも感じます。

毎年4月になると電話で今現在の茶畑の様子を連絡してくれます。
ここは山深い茶畑なので例年4月最後の日曜日に茶工場の掃除をして準備に入り、5月の連休あたりから生産が始まります。
ただ今年は3月が暖かい日が多かったため、最初の義久さんの電話では「もしかしたら4月から始められるかもしれないよ。」とありました。

石松園のお客様は毎年この遅い「森の改良 手もみ茶」を待って下さいます。
世間では4月の後半から「新茶」の売り出しがスタートし、5月の連休には100gあたり1050円・840円という買いやすい価格帯の新茶が店頭に並びます。
それに対し石松園の「森の改良 手もみ茶」は5月の10日にやっと最初の100gあたり3150円や2100円というお茶が出来上がり、15日頃に1050円、20日頃に630円が出来上がります。
「新茶」を八十八夜にプレゼントしたいという方からすればあまりに遅すぎるのですが、このお茶を知って下さっているお客様は待って下さるのです。

本当にありがたいことです。

八十八夜に飲みたいという方には違う産地のお茶を先に生産して対応します。
それも直接農家の方達から仕入れる本当においしい「新茶」を追求しています。
が、この「森の改良 手もみ茶」にはこのお茶にしかない魅力があります。それは「山の香り」と「濃厚な味わい」です。
正直に言えば、万人受けするお茶ではないと私は思います。
ですが、一度ハマり込んだら抜け出せない魅力が在ると思うのです。

言葉で説明するのは難しいのですが、一言でいえば「ワイルド」なお茶だと思います。
お茶でお腹がいっぱいになるような濃厚さが特徴です。茶葉に「甘み」や「渋み」や「旨み」が凝縮されているといった感じです。

このお茶のファンの方は「一度このお茶を飲んだら、他のお茶が軽く感じる、とか薄く感じるとか、物足りない。」と言って下さいます。
ですが、お茶は趣向品なのでまた違う好みの方には違うお茶をお勧めしています。

そして4月。特に2週目の後半は寒い夜が続きました。お茶は植物です。出るか出ないかという状態にあった新芽の伸びは抑制されました。

すると義久さんからまた電話が在り「逆にいつもより遅れるかもしれないよ。」と連絡がありました。
結果的に例年より1週間の遅れとなりました。
しかし、待った甲斐があり「山の香り」と「濃厚な味わい」が例年の1.5倍増しな「新茶」が出来上がりました。
そのことを義久さんに伝えると彼はこう言いました。「4月の朝晩の気温と日中の気温にもの凄い差があった。遅くはなったけどその分旨みや香りが強くなったのではないか。」と。

石松園とこの農家達は信頼関係だけで成り立っています。
他では販売されない「森の改良 手もみ茶」という独特なお茶をつくって頂く。
そして農家の方々は他には販売できない「森の改良 手もみ茶」をつくらせて頂く。

その商談スタイルもおそらく独特です。各個人が作ったお茶をつくったお茶ごとに番号を付けて大海(ダイカイ)という袋に入れて、それがある程度の量になったら電話をもらいます。
そして茶工場に行き、両者立会いの下そのひとつひとつを拝見盆という黒いお盆に入れて、そして拝見茶碗という真っ白な茶碗に入れて熱湯を注ぎ審査していきます。

写真 (1)

家庭でお茶を美味しく飲むためには冷ましたお湯というのが大きなポイントなのですが、茶葉を審査するときはこの熱湯が大きなポイントです。
茶葉は熱湯で浸出させるとその茶葉の欠点を浮かび上がらせることができるからです。
審査項目は茶葉の形状・香り・滋味。そしてお互いが話し合い、私はそのひとつひとつに1kgあたりの単価を決めて提案し、決めていきます。

今年のお茶は全体的に出来がよく買わせて頂く側としては難しい部分もあったのですが、販売の仕方などの状況もしっかりと説明し、お互いに気持ち良く取引をさせていただくことが出来たと思います。

あとはこの茶葉をきちんと丁寧に仕上げてお客さまに届けることが石松園の大事な仕事だと思います。
農家の方々のいい仕事で渡して下さった最高なバトンを、最高な状態でお客様に届けたいと思います。そしてそこに少しでもつくって下さった方々の想いを込めることが出来ればと考えています。

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