石松園は「世界緑茶コンテスト」で金賞を頂くことが出来ました。その2
2013年09月25日 12:04
石松園の高野です。
今回は藤枝茶名人達と「世界緑茶コンテスト」で金賞を頂いた作品の全貌に迫りたいと思います。
今回の作品はひとりひとりの「茶」を単品として取り扱うことができ、またセットとしても取り扱うことが出来るようにつくりました。
DISC1 「玉露(ぎょくろ)」 尾村 甫(おむら はじめ)作
「玉露をきわめる。」
「玉露の大家」尾村氏の茶です。その名は海外にも「玉露の尾村」として知れ渡り、海外から視察に来たり、また海外に指導に出向くこともある名人です。その人柄から表に出たがらないのですが、日本の茶業における「歴史」と「伝統」を知り尽くし、それを継承しつつも「新しい茶業」をつくるという茶業界におけるプロフェッショナルの一人です。
この玉露の栽培方法は、茶の新芽が出てから覆いをかぶせて日光から遮断します。このことにより「茶葉」は旨みや甘みをその体内により多く蓄積させることができるのです。近年では、寒冷紗(かんれいしゃ。化学繊維でできた布地。)をかけることにより遮光するつくり方が多いのですが、大変な思いをしても、わらを編んでつくった「こも」にこだわり栽培しています。尾村氏曰く、「お茶も人間と同じ。自然のもの「こも」と化学繊維でできた「寒冷紗」では、急激な温度変化に対して違いがある。寒冷紗では中の温度が急激に熱くなったり冷え過ぎたりということがあるが、自然の「こも」はいい感じを保ってくれる。そしてなぜだかやわらかみの在る茶ができる。」と。そのこだわりこそが本物の証です。
DISC2 「手揉み茶(てもみちゃ)」 住田 良朗(すみだ よしろう)作
「<茶心>を伝える。」
「手揉み茶栄世名人。」日本でわずか2人しか認定を受けられていないこの称号を持つ住田氏の「茶」です。
農林水産大臣賞4回受賞の実績を持ちます。
「手揉み茶」とは、煎茶本来の製法で茶の理想的な 「カタチ」 「味」 「色」 「香り」と言われています。そしてそれは誰もが表現できるものではありません。出来上がった茶葉の形状は「針状」で「艶」があります。そして、湯に浸すと元の茶葉の形が現われます。住田氏曰く 「茶心を持って揉むこと。全てはこれに尽きる。葉っぱに対して想いを込めて触れる。手に受けた感触これを五感全て最大限に使って、目の前の茶葉の状態を理解し、その葉に合わせた揉み方をする。」と。
この「茶」は、「深い経験」と「強い想い」が在るからこそ、できる茶です。
DISC3 「大茶樹(だいちゃじゅ)」 平口 好三(ひらぐち こうぞう)作
「<長寿>をことほぐ。」
藤枝市瀬戸ノ谷にある、静岡県最古と言われる樹齢300年の「藤枝の大茶樹」。
山間地でこの茶樹を守り、先代 猛志氏(101歳)と共に夫婦で広大な茶畑で茶をつくる平口氏の茶です。
大茶樹は、高さ4メートルで周囲が33メートルもあります。毎年この「大茶樹の新茶の摘採」はニュースとして取り上げられます。2013年は、5月18日に30人がかりで茶葉15キロが摘際されました。この茶葉「長寿の香り」は、市内高齢者施設に届けられました。「長寿の秘訣は、お茶。」を自ら体現している猛志氏と共に育てている茶です。
この茶は「大茶樹」を挿し木で増やした茶葉で、現在では貴重な在来種のスッキリとした味わいがその特徴です。
DISC4 「藤枝かおり(ふじえだかおり)」 山本 祐司(やまもと ゆうじ)作
「<かおり>をめでる。」
「ふじえだかおり」という品種茶のその開発当初から取り組んでこられた山本氏の茶です。
お茶にもお米のよう「こしひかり」「あきたこまち」のように、「やぶきた」や「べにふうき」のように品種が在ります。
この「藤枝かおり」という茶は、一般的にはジャスミンのような高い芳香があると言われています。
このかおりを出す茶葉を栽培し、つくる作業はとてもデリケートな作業です。このデリケートな「藤枝かおり」という品種を丁寧に育て上げてきた姿勢にこそ、彼の「香り」にこだわるという気持ちが現れていると思います。
高いその香りと上品でやさしい味わいを感じて頂きたいです。また、この茶は冷やしてもおいしく頂くことが出来ます。
DISC5 「和烏龍茶(わうーろんちゃ)」 麓 茂樹(ふもと しげき)作
「あるがまま、なるがまま。」
期待の新星、麓氏の茶です。この茶名人の中では最年少ですが、茶に対するその研究と努力は凄まじいものが在ります。この茶は茶葉を月の光の下で、萎凋(いちょう。簡潔に言えば、茶の生葉をしおれさせること。)させてつくった烏龍茶です。今回は「かなやみどり」という品種の茶葉でつくりました。袋を開けた瞬間にフワッと拡がり、鼻孔に届くなんとも形容しがたい甘美な香りがこの茶の特徴です。
また、飲み口もとてもやさしい甘みのある茶です。まさに「癒し」を与えてくれる茶とは、こういう茶のことであると思います。
高値山のふもとで、様々な「茶の可能性」に取り組むその姿勢が「茶葉」にもしっかりと表現されていると感じます。
とてもやさしい茶です。
以上が今回の作品の「茶」です。是非こんな「茶」と出逢って頂きたいと思います。