美しすぎる石松園の製菓用抹茶は食品偽装か!?
2013年11月14日 10:30
石松園の高野です。
最近特にお問い合わせをいただく「茶」があります。それは「抹茶」です。
お問い合わせいただくのは、主婦の方から、洋菓子屋さん、和菓子屋さん、ホテルのレストランのコックさん、アイスクリーム屋さん、これから抹茶カフェをやろうとしている方など様々です。
お問い合わせいただく方々は、みな様々な目的を持ってこの「抹茶」を使用されている方々ばかりですが、
お問い合わせの内容は「ひとつ」です。
「どうしたら綺麗な抹茶色のお菓子をつくることができるのか?」という内容です。
今日も先程、洋菓子店を営まれていらっしゃる方が現在使用されている「抹茶」を持って相談に来てくださいました。
写真の左側がお客様が持ってきて下さった「抹茶」で、右側が石松園で製造・販売している「抹茶」です。
一目瞭然に「色」と「風味」が違います。裏に張ってある表示を見ると、「名称:抹茶」「国内産」とあります。
「同業者から安くて使いやすいよと紹介された。」ということでした。しかし、価格を聞くと驚くほど高価なものでした。
私なりに調べてみると、想像がつきました。
ひとつには、「この茶は遮光栽培していないのではないか?」ということです。
「抹茶」とは、日光から遮って栽培された茶葉を、蒸して、揉まずに乾燥させて「碾茶(てんちゃ)」にします。
そうすることで、甘み成分であるテアニンを豊富に含み、渋み成分の少ない茶に仕上げていきます。
一般的に、遮光栽培されていない茶葉を粉末状にした茶葉は「粉末緑茶」と呼ばれています。「抹茶」ではありません。
これは石松園で使用している「碾茶」です。左が「秋摘みの茶葉」で、右が「2番茶(7月10日製造)の茶葉」です。
「遮光栽培」をするかしないかで、原料の段階でこれだけ色味に違いが在るのです。「茶」を淹れる場合でも、見た目の色と淹れたお茶の色(水色。すいしょく。)は同じ様に出ると言われています。
もうひとつには「この茶は石臼で挽いていないのではないか?」ということです。
「抹茶」とは先ほど述べた「碾茶」を石臼で挽いて粉状にします。機械を使用したりするなどして茶を粉々にする「粉砕方式」という方法もあります。この方法は一度に大量に作ることが出来ると言うメリットがあります。ただし、機械自体が熱を持ち、その熱が茶葉を通って茶葉を変質させてしまうと言うデメリットが在ります。色が落ちたり、風味が飛んでしまうのです。それに対し、石臼で挽くのには本当に時間がかかります。24時間石臼を廻し続けても、できる量はほんのひと山です。ただこの石臼で挽くと言う作業にはとても大きな意味が在ります。石は鉄と違って熱を持たないため、熱で「色」や「風味」を変えてしまうということがありません。また、時間をかけてじっくりと粉状にしていくため、粒子がとても細かく均一な粒子になります。粉砕した場合は、ムラがあり均一ではありません。
この写真は石松園で仕入れた「秋摘み」の碾茶でつくった「粉末緑茶」です。先ほどの「碾茶」の写真左側の茶葉でつくりました。なぜ「抹茶」と呼ばないかというと、この原料は「遮光栽培」をしていないからです。それは実際に日頃から農家の方と話し込んでいなければわからないことであるかもしれません。そしてその原料を、左は「粉砕方式」で粉にした茶、右は「石臼挽き」で粉にした茶です。
よく見ると青さの違いがわかります。先ほど述べた「茶」を淹れる場合でも、見た目の色と淹れたお茶の色(水色。すいしょく。)は同じ様に出ると言われていることからすると結果は明らかです。ましてや、製菓用として使う場合、特にクッキーやケーキなどの「焼き菓子」に使用する場合は、そこに熱を加えるなどの加工をすることとなるので変色を避けることは難しいと思います。
ちなみに、この「石臼挽き粉末緑茶」は、先日アイスクリーム屋さんからご依頼頂いたものです。「綺麗な緑色」と「渋み」が欲しいというご依頼でした。この二つを表現できるのは「遮光栽培していない茶葉」と「石臼挽きで極力色をキープする」という方法だと思ったのです。また、最近ではこの「カテキン」をまるごと体内に取り込めるという理由から、「糖尿病」の方がお医者様に勧められて来られることも多いです。「茶」には、その目的に合った使い方が在るのです。
先程のお客様が帰られた後、石松園の抹茶をお使い頂いているお客様数件に電話して、改めて自社の抹茶について聞いてみました。なかでも石松園の「抹茶チョコレート」を作って頂いている佐藤さんのお話はとても勉強になりました。
このチョコレート工場は、日々様々なチョコレートや菓子を製造されている中で、「抹茶」を見る機会も非常に多いそうです。「お茶屋」「菓子メーカー」など様々な取引先からこの「抹茶」で製造して欲しいと依頼を受けるからです。佐藤さん曰く 「原料の産地も「宇治」「西尾」「静岡」など様々で、「色」も「風味」も本当に様々だよ。だけど、宇治だからいいとか静岡だからいいというわけではなくて、産地名に関わらずひとつひとつそれぞれに良いものも悪いものもある。」ということでした。また、最近では「耐熱性抹茶」という加工された抹茶もあるそうです。こうなってくると「茶」ではないと私は思います。佐藤さんも同様の意見でした。私は佐藤さんにお礼を言い、電話を切りました。
これからも「本物」にこだわりたいと強く想いました。