お茶コラム

音楽と茶。 ~エルモア・ジェイムス~

2017年05月26日 14:03

石松園の高野です。

前回のコラムでも少し触れましたが、今年は3月の気温が低かったことから
例年よりも全体的に新茶の生育が遅れました。
そんな状況の中、ゴールデンウィーク明けからは日ごとに
静岡県内の山間地の様々な産地のお茶が出来上がってきました。
今回はそんな山の茶の中でも唯一無二の個性を持つ石松園に伝わる山の茶
「森の改良手もみ茶」をご紹介したいと思います。

ここ静岡県は県内各地にそれぞれ特徴を持つ茶産地が存在します。
そしてその土地の特徴に加えて、気候の特徴、つくる人の考え方によっても
出来上がる茶は大きく違いが出ます。
ただそれはこのお茶屋の仕事をし続けてきたことでだんだんわかるようになったのですが、
この仕事に就いたばかりの頃は全く何もわかりませんでした。

今でもよく覚えているのは初めて茶市場に行った時のことです。
理科室のような大きな部屋に、産地別にテーブルが分けられており、
黒い拝見盆というお皿に、仕上げる前の茶の原料(荒茶)が所狭しと並べられています。

見た目に葉っぱが大きいなであるとか、色が濃い緑色だなであるとか、
細かい葉っぱだなとかごわごわした葉っぱだなとかは何となくわかりますが、
その茶葉を淹れるとどんな香りがするか、どんな味がするのか、
茶碗にどんな色合いのお茶が入るのかなど全く想像がすることは出来ませんでした。

その後、まず知ることからはじめました。
県内数か所の茶市場に何度も何度も足を運び、何杯も何杯も飲み比べました。
茶葉を触り、鼻で嗅ぎ、穴が開くほど見続けた日々でした。
4月中旬から5月の中旬までの間、毎日早朝から、
お茶の見れる場所さえあればどこへでも行く日々でした。
店に戻ってくる朝8時ころには新茶の飲み過ぎで、
フラフラで頭もボーッとして帰ってきたことを覚えています。
とにかく産地ごとのイメージを身体で覚えようと必死でした。
その中で出逢った方々とのおかげで現在があります。

当時は、感覚として自分なりの理解を深めたいと思い、
自分の大好きな音楽に置き換えて理解しようとしました。
例えば、牧之原のお茶はビートルズで、掛川はキンクス
川根はフーで、森町はローリングストーンズといった感じです。
そして同じ川根でもあの人がつくるお茶はジョンリーフッカーだなどと
自分なりに引き付けることで、とてもわかりやすくイメージすることができたのでした。
現在もいろいろな茶葉を見ながら、イメージしながら、向き合うことにしています。

そして本題です。
今年の「森の改良手もみ茶」が出来上がりました。
この茶のイメージは、アメリカの偉大なるブルースマン
「エルモア・ジェイムス」です。
学生の頃、はじめて彼の音楽を聴いたときにあまりの生々しさと
野性的なムードに驚きました。
この「森の改良手もみ茶」というお茶を初めて飲んだ時も同じ印象を受けました。
おいしいとか、香りがいいとか、色がきれいとかいうおいしいお茶の条件を並べる以前に、
有無を言わさずにガツンとくるイメージの茶です。
濃い緑色の茶を口に近づけると、山の香りがふっと拡がります。
そしてひとくち、濃い緑色の茶を含むと
甘み・うまみ・渋みなどのいろいろな要素の滋味が口の中にあふれてきます。
飲んだ後、喉の奥の方にまだその余韻がしっかりと残ります。

決して万人受けする茶だとは思いませんが、
一度はまったら抜け出すことのできない魅力を持つ茶であると思います。
私自身、初めて飲んだ時にこれがおいしい茶であるということが全く理解できなかったのですが、
今ではこの茶以外の茶は何か物足りなく感じてしまいます。
そんな茶が、「森の改良手もみ茶」です。

今年も濃く、野性味いっぱいに出来上がりました。
人の住まない山奥にある茶園で育った茶です。
これを繋いでいきたいと思います。

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