2016 新茶の旅 つづき
2016年06月14日 21:10
石松園の高野です。
本日、「茶の定期便 六月号」をお送りさせていただきました。
この「茶の定期便」とは、石松園のお店ではここ数年扱っている商品で、「ふるさと納税」のお礼品のひとつにも加えちょうど一年が経ちました。
これは毎月、私が届けたいと思う「茶」を厳選してお届けするというものです。
季節に応じて、またその時期に飲むことがベストだと思う「茶」を選ばせて頂きます。
ここ数年お届けしてきた経験から基本的なメニューについては決めていますが、その時々でこれは今届けたいという「茶」があれば盛り込みます。
北は北海道から南は沖縄県までのお客様に、静岡県の茶を、その時伝えたい茶をしっかりと伝えたいという一心でつくります。
それはひとつのコース料理のようなイメージでつくります。
今回の六月号についてはしっかりと表現したい新茶が柱としてあったので、コースというよりは定食風ですが・・・。
自信をもって、飲んでくださる方へ石松園の想いを込めて、発送させていただきました。
前回に続いて、定期便に添えたお手紙を描きたいと思います。
お茶の定期便(6月)
いつもありがとうございます。
若葉青葉の候、皆様お変わりございませんか。
今年、4月18日より開始させていただきました新茶も、この6月上旬でひと通り昨年のお茶と入れ替わりました。
今年は茶の生育にとって絶好の天候が続いたことにより、ここ数年では最高の出来栄えといわれる一番茶シーズンとなりました。
今月も、そんな中から私なりに今年のベストであり、今 味わっていただきたい新茶をお届けしたいと思います。
(1) 森の改良手もみ茶(八十八夜)
石松園の代名詞というべき茶の八十八夜摘み特上茶です。
今回この茶を、2016年デザインの新茶缶と袋にお詰めいたしました。
この茶の特徴は、「濃さを有すること」。
香り・うまみ・渋み・風味・色調・後味などすべてにおいて唯一無二の濃厚さと重厚さを
持つことです。
特に今年の茶は「甘味・うまみ」が強いように感じます。
栽培してくださる農家の方々とのお話から、茶園に肥料を入れるタイミングと気候条件が揃ったことに、その要因がありそうです。
また、仕上げ加工においても、しっかりとした火入れ(火で熱した機械で乾燥させる工程)を行い、
封を開けた時に茶の香りが拡がるようイメージしました。
大自然の恵みを授かり、ゆっくりと流れる時間の中で力強く、味わい豊かに育った茶葉をご堪能いただきたく存じます。
決して万人に受ける茶ではないかと存じますが、お愉しみいただきたいと思います。
いつもこの茶園へ向かうときは決死の覚悟で登ります。
急な斜面を、車一台やっと通ることのできる幅の道を、ただひたすらにがむしゃらに登っていきます。
人が住まない、秘境ともいえる地で、何度も怖い思いもしましたが、山頂に立つとその美しさには感動するばかりです。
(2) くき茶 (棒茶、かりがね、白折)
一番摘みの茶を仕上げ加工する際に、選別された茶の茎の部分を主体として、つくった茶です。
一般的な茶の仕上げ工程は、
① 選別 荒茶(あらちゃ。仕上げる前の原料段階の茶。)から、茎・粉などの部位をふるい分けて、取り外し、切断して形を整える。
② 火入れ乾燥 茶をさらによく乾燥させると同時に、その茶の持つ独自の香りを最大限に引き出すために、火を入れ、乾燥させる。
という大きく二つの工程を踏みます。
その一つ目の選別の段階でふるい分けたのが茶の茎の部分です。
呼び方は地域によってもいろいろですが、くき茶や棒茶と呼ぶのが一般的です。
水色(すいしょく。淹れた茶の色。)は薄いのですが、さわやかな味と香りがあり、またアミノ酸が多く含まれる部位であり、
うまみ・甘味成分のテアニンが多く含まれているのが特徴です。
縁起が良いとされる「茶柱」は、茶碗の茶に立つこの茎のことを言います。
(一芯二葉を摘むのですが、その一つの芯芽と二枚の葉のもとにあるのが茎です。)
今回の「新茶」も、先月と同様に、静岡県産の茶でありながら、おのおのが異なる特徴を持つ「茶」であると思います。
共通点とすると、ともに縁起が良いと言い伝えられている点です。
無病息災や不老長寿の縁起物といわれる「八十八夜の茶」、
茶柱が立つと吉事の前ぶれといわれる「くき茶」。
しあわせを願いながら、「新茶」の世界をお愉しみください。
石松園 高野 一夫