2016年 新茶の旅 。
2016年06月13日 21:05
石松園の高野です。
先週いっぱいで、今年度の新茶一番茶の製造及び出荷がひと段落しました。
この4月中旬から6月上旬というのは一年に中で、最も茶と触れ合うことのできる季節であると感じています。
何度も何度も茶園に足を運び、たくさんの茶の素晴らしさを実感することのできる時期です。
そうして得たタカラモノを少しずつここに記していきたいと思います。
この間に二回「茶の定期便」をお送りしたので、まずは定期便につけた手紙を記したいと思います。
茶の定期便(4月)
いつもありがとうございます。
新しい年のお茶、「新茶」の季節のはじまりです。今年の一番茶は生育が順調で、
今週から(18日~)静岡県内様々な産地で、荒茶(あらちゃ。茶の原料。)の製造がはじまりました。
静岡県内各産地の茶が集まる静岡茶市場の「新茶初取引」も21日に行われました。
ここから5月1日の八十八夜に向けて、新茶の生産は本格化していきます。
そんなこの時期にしか味わうことのできない「茶」を、今回の定期便として、お届けしたいと思います。
大走り新茶(おおはしりしんちゃ)・・・日本茶業中央会の「緑茶の辞典」によると、
【新茶の中でも特別に早く生産されたものをいう。
魚、野菜などで初物を走りというように、一般に「旬」以前のものをいういいかたである。】とあります。
まさにそんな茶です。
ここ静岡では、柔らかく幼い、赤ちゃんのような状態を指して、「みるい」という言葉を使います。
そんなみるくて、やさしいお茶がこの「大走り新茶」です。
今回の茶の産地は、静岡県内で例年、最も早く新茶がはじまる 「相良(さがら)」という土地です。
上記したように、新茶は始まると「旬」である八十八夜に向かってどんどん伸びていきます。
その間であるこの10日間につくる茶は、この時期にしか味わうことのできない柔らかな香りと味を有します。
「新茶」とは新しい年の茶だから新鮮になるのではありません。
「新茶」を楽しみにしている方々の気持ちが新鮮でワクワクして下さるから、「新茶」が輝くのであると思います。
存分にお愉しみいただきたいと思います。
お茶の石松園 高野 一夫
お茶の定期便(5月)
いつもありがとうございます。
新緑のみぎり、皆様お変わりございませんか。
今年、石松園では4月18日より新茶の販売を開始させていただきました。
先月お送りさせていただいた「大走り新茶」はまさにその時期に摘んだ、その時期にしか手に入れることのできない、
一番はじめの柔らかな、まるで赤ちゃんのような新芽でつくった茶です。
あの時の茶葉は、現在欲しくてももう手に入りません。
今年はスタート自体ほぼ例年どおりの始まりですが、その後ずっと晴天が続き、茶の生育にとって絶好の天候が続いたことにより、
現時点で今年の新茶はここ数年では最高の出来栄えといわれる新茶シーズンとなっております。
今月も、そんな中から私なりに今年のベストであり、今しか味わうことのできない新茶をお届けしたいと思います。
(1) 限定品 2016年度 生茶(なまちゃ)
生々しく瑞瑞しいこの時期にしか味わうことのできない新茶の中の「新茶」です。
茶業界では「荒茶」と呼びます。通常販売している茶は、この「荒茶」から茎や粉をはずし、より乾燥させて「仕上げ茶」として袋詰めをいたします。
この「生茶」は敢えて手を加えずに、茶そのものを味わっていただきたいという思いを込めてお届けいたします。
そのため、いつ・どこで摘採された茶葉で、そこに茶の持つ魅力がどれだけ詰まっているのかが重要です。
今年も厳選に厳選を重ねて、4月26日摘み、牧之原の茶葉にいたしました。乾燥度合いが弱いため、夏前・7月中旬までにはお飲みいただきたく存じます。
(2) 森の改良 手揉み茶 (大走り 手摘み)
この「森の改良 手もみ茶」は、石松園の代名詞というべき茶です。
石松園の初代 濱吉が遠州森町からさらに山深い、
川霧の立ち込める「木根」という地に茶畑を見つけたことが、石松園のはじまりです。
この茶の特徴は、「濃さを有すること」。
香り・うまみ・渋み・風味・色調・後味などすべてにおいて唯一無二の濃厚さと重厚さを持つことです。
濱吉は、この茶を「森の改良 手もみ茶」と名付けました。そして、この遠州森町は清水次郎長28人衆のひとり「森の石松」の故郷であることから、
その石松の墓がある大洞院(だいとういん)というお寺を訪ね、住職から「石松園」という屋号を賜わりました。
先日この茶畑に出向いたところ、カモシカに蹴られた岩や石が道をふさいでいたため、除去しながら時間をかけて登りました。
そんな大自然の恵みを授かり、ゆっくりと流れる時間の中で力強く、味わい豊かに育った茶葉をご堪能いただきたく存じます。
決して万人に受ける茶ではないかと存じますが、お愉しみいただきたいと思います。
今回の「新茶」は、静岡県産の茶でありながら、おのおのが正反対に位置する「茶」であると思います。そんな「新茶」の世界をお愉しみください。
石松園 高野 一夫