「抹茶の定義」
2017年06月08日 23:55
石松園の高野です。
先日、とある有名なテレビ情報番組を制作されていらっしゃる方から
お問い合わせをいただきました。
「抹茶」の定義とその現状について教えてほしいという内容でした。
それはこの私のお茶コラムを読んでくださってのお問い合わせでした。
2013年5月に描いた内容についてのお問い合わせでした。
以下に、そのコラムに少し加筆したものをお届けします。
「抹茶」とは何かについて、その定義をご説明したいと思います。
■「抹茶」の原料である「碾茶」の栽培方法
一般的な「茶」は自然の日の光を浴びて生育しますが、
「玉露」と「碾茶(抹茶の原料)」だけは栽培方法が異なります。
芽が出た茶の樹を日光からさえぎって栽培するのです。
こうすることで茶葉の甘み・旨みが増し、
茶葉の色も何とも形容しがたいキレイな緑色になります。
そしてこの遮光(日光からさえぎること)には古くからわらを編んでつくった菰(こも。わらを編んだゴザみたいなもの。)を
茶畑の上にある棚にかけて、さえぎります。
最近では、寒冷紗(かんれいしゃ。化学繊維を編んで作った遮光用ネット。
近年は白や黒のものが主流である。)を使用することが多いです。
こもに比べて、作業効率が良く遮光率も高いです。
ただし、生産家によっては「こも」にこだわるのには理由もあります。
曰く『お茶も人間と同じ。自然のもの「こも」と化学繊維でできた「寒冷紗」では、急激な温度や湿度の変化に対して違いがある。
寒冷紗では中の温度が急激熱くなったり冷え過ぎたりということがあるが、「こも」はいい感じを保ってくれる。
そしてなぜだかやわらかみのあるお茶ができる。』と。
こもをかける作業はとても大変で、いつも「目汁・鼻汁でぐちゃぐちゃになるよ。」と言いますが、
それをする大きな理由があるのです。
遮光栽培した「碾茶」と日の光を浴びて育った「煎茶」では、
挽いて粉にした時の味に大きな違いが出ます。
碾茶を挽いた抹茶はとてもきれいな深く濃い緑色で、甘味や旨味が強いです。
一方、煎茶を挽いた粉末緑茶は黄色が買った緑色で、ただただ苦味が感じられます。
抹茶は濃い緑色で、粉末緑茶は黄緑色です。
抹茶は甘く、粉末緑茶は苦いです。
抹茶はテアニン、粉末緑茶はカテキンです。
こうした違いがあります。
■加工方法
(1) 碾茶の加工方法
摘採した茶葉を、一度蒸して発酵を止めて、大きな「炉」で乾燥させます。
一般的な「茶」は揉み(もみ)ながら水分を除去し、製茶していきます。
「碾茶」はただ乾燥させるという工程だけです。
<抹茶と煎茶の工程の違い>
緑茶は摘んだ茶葉を蒸して茶葉の発酵を止めた後、そじゅう→じゅうねん→ちゅうじゅう→せいじゅう→乾燥という工程を経て、
生の茶葉を熱風に当てながら水分をもみ出すという作業をするのに対し、抹茶は一切もみ出すという工程を行いません。
葉のままを蒸して発酵を止めた後は、ひたすら茶葉を熱風で乾燥させてパリパリの葉っぱにするという作り方です。
(2) 抹茶の加工方法
碾茶をを石臼で挽いていきます。
一定の速度で挽いていきます。
挽く前には、茎の部分を除いたり、挽きやすいように茶葉を細かくするなど準備をしてから行います。
石臼を24時間フル稼働させても、実際にできる「抹茶」は働させても、実際にできる「抹茶」は300g~500gです。
それだけゆっくりと時間をかけて挽くからこそ、均一でなめらかな「粒子」のなるのです。
抹茶は本来遮光栽培と、この石臼で挽いたものしか抹茶とは呼びません。
石臼で挽いていないボールミル等で粉砕したものを、抹茶とうたって販売されていることもあります。
簡単な見分け方は、本物の石臼で挽いた抹茶は立てたときに泡がしっかりと立ちます。
粉砕しているだけのお茶はキメが荒い為と茎なども混じっている為にテアニンの量も増えず、泡があまり立ちません。
以上が「抹茶」の製造の流れです。
そして
「抹茶の定義」とは、
(1)遮光栽培(摘採前2~3週間)した茶葉をその原料として使用していること。
(2)茶葉を高温の蒸気で熱し、もまずに乾燥させた碾茶を使用していること。
(3)碾茶を石臼で挽いて粉状にしたものであること。
です。そしてこれは日本茶業中央会が26年ぶりに改定の検討をした内容であるそうです。
だから、テレビの人からお問い合わせいただいたのでした。
それは、「抹茶」に携わる人は皆当然のこととしてやってきたことです。
そして、これまで通りに本物の抹茶をお届けしたいと思います。
そしてついに本日、二〇一七年第一号の静岡抹茶
石松園「小園の月」が出来上がりました。
本物の抹茶をどうぞ。