家計にやさしいお茶とは?
2013年06月12日 12:44
石松園の高野です。
ここ静岡県の産地によっては、今まさに今年の新茶(今年度生産されたお茶)の「二番茶」の摘採が最盛期を迎えつつあります。
茶は植物であり気候の変化によって生育も大きく変わることから、茶農家の方々は台風情報をみながらいかにいい茶葉を生産するか格闘中の日々です。
「二番茶」とはその名の通り、その年2回目に摘際された茶葉でつくるお茶のことです。
一般的には、最初の「一番茶」を摘採してから45~50日後が摘採期と言われています。
「一番茶」と比較すると、品質面では(香り・風味)劣りますが、農家の方々は2番茶だからこそできる工夫をしているということも事実です。
例えば、茶の樹を覆い日光から遮断して育てることでキレイな緑色のお茶をつくる努力をしたり、製造工程でカフェインを抜くという工夫をして妊婦や子供、お年寄りにやさしい「ノンカフェイン茶」などをつくる生産家もあります。
そういうオモシロさを創造できるのも「二番茶」ならではです。
それぞれにそれぞれの個性が在るのだと私は思います。
そして今回のテーマ「家計にやさしいお茶とは?」にはいります。
以前、幼稚園で行った母親学級の中で行った「お茶講座」で質問されたことがあります。
先に「二番茶」のことを書きましたが、今回の答えはこれではありません。
あくまでも今年一番最初に摘採された最高の茶葉「一番茶」でありながら「家計にやさしい」お茶を今日はお伝えしたいと思います。
石松園は、現在まだ「一番茶」の出荷に追われる日々です。
そして現在出荷しているこの一番茶こそが今回の「家計にやさしいお茶」です。
農家の方から仕入れた茶葉は「荒茶(あらちゃ)」と呼ばれます。
この「荒茶」はそのまま飲んでも十分に美味しいのですが、「生の状態に近いため変質しやすい」 「見た目が悪く、風味も大雑把になりがち(お茶の茎や粉など全てが混ざっているため)」などの欠点も持ち合わせています。
そのため石松園のような製茶問屋では「仕上げ加工」を行い、製品として販売します。
様々な工程はあるのですが、主には荒茶から「茎や粉を取り除く加工」と「火入れ」といって再度乾燥させる加工です。
こうすることで輪郭のはっきりした美味しい「仕上げ茶」が出来上がります。
そして取り除いたお茶の茎の部分を集めて作る「くき茶(棒茶)」や、粉の部分を集めて作る「粉茶」や、逆にお茶の新芽の部分だけをより分けてつくる「芽茶」などが、今日の答え「家計にやさしいお茶」です。
茶業界ではこれらを「出物(でもの)」と呼びます。
製造過程で出てくるものだからです。ただ実際には一番茶であるのでそれぞれにそれぞれの美味しさがあります。
「くき茶(棒茶)」は摘採されたお茶の部位の中で、最も甘み・旨み成分を持つ部位です。
淹れたお茶の色はそれほどキレイな緑色ではありませんが、甘みが強く子供達もゴクゴク飲めるかと思います。
「粉茶」は以前のコラムでも触れましたが、キリッとした渋みを持ち、色も味も濃いです。
お寿司屋さんやうなぎ屋さんからの注文が多く、それはこのお茶を飲むと魚料理などの生臭さを瞬時に消して口の中をサッパリとさせてくれるからです。
「芽茶」は濃厚な風味が特徴ですが、粉茶よりも上品な味わいです。
石松園ではこの「芽茶」のファンが多いです。
それは、キリッとした渋みと同時に新茶の新芽の甘みも味わえるからであると思います。
そしてこれらの「出物」は仕上げ茶と比較すると、価格的にかなり安価です。
実際には高価な一番茶に違いは無いのですが、「出物」ということで、茶業界にはそういう商習慣が在るようです。
大体が100gあたり600円前後です。
お茶はひとりで飲む場合、1回に茶葉を約3g使用します。これで3煎飲むと仮定すると、100gの茶葉で飲めるお茶は約100杯です。
ということはこの「出物」で淹れたお茶は、1杯あたり6円という計算になります。
この計算式は高価とされる茶葉にも適用できます。
すると「ペットボトル」のお茶は便利で、手軽で、すぐ飲めるという利点がありますが、いかに高価な飲料であるかとも思えるのです。
「お茶」は嗜好品であると同時に、普段気軽に飲む飲料でもあります。
私は高価なお茶がいいお茶であるとは思いません。それを飲む人の飲み方(ライフスタイル)や、好みに合うお茶こそがその人にとっての「いいお茶」なのだと思っています。
ちょうど、一番茶から二番茶に切り替わりつつある今。
自分の好みに合う「一番茶の出物」を探していただきたいと思います。本当においしいです。
「いつ買うか?」 「今でしょ。」