美味しい新茶の芽の秘密
2014年04月18日 11:27
石松園の高野です。
いよいよ静岡県も新茶の時期となりました。
今週15日に牧之原の茶園にお伺いして、今年度の茶の樹の発育状況の確認及び今後の動きの打ち合わせをしてまいりました。そして今年の新茶は素晴らしい出来栄えであることを確信することができました。
静岡県内には有名な茶産地がありますが、一番最初にスタートするのは「初倉」「御前崎」「相良」といった南部地域です。
そして「牧之原」「菊川」「金谷」、そして山間地である「掛川」「森町」「川根」「足久保」といった地域に拡がり、東部地域の「富士」へと拡がっていきます。
今年度の「静岡茶市場」の初取引は4月23日に行われることが先日発表されました。この日を前後して県内では町中に新茶ムードが高まり始めます。そして5月2日の八十八夜からゴールデンウィークにかけてその盛り上がりも一気にピークを迎えます。そんな中、この時期は生産家・問屋・小売店全てがバタバタとしながらも、おいしい新茶を届けるために全神経を注いで動き回ります。
お伺いした茶園ではいろいろなお話を聞くことが出来ました。特に一番感じたことは「茶づくり」に込められた想いです。
日本には様々な茶園が在り、そのそれぞれに想いが在ります。この茶園ではとにかく高品質な茶をつくることにちからが注がれています。そのために土壌の成分分析に始まり、その土壌をよくするための肥料の研究そしてその肥料の調達など様々な努力がされています。
そして、その成果が上の写真です。一見同じように見える茶畑も、よく見てみると芽の出方や勢いが全く違うのです。通常この時期になると真ん中の新芽はしっかりと伸びてきます。しかし側芽(そくが。わき芽ともいう。)と呼ばれる頂部ではなく各節で形成される芽をしっかりと伸ばすことは容易ではありません。実際に茶畑によっては、この写真の畑ほど芽の密度のない畑もよく見られます。
またこの茶園では、茶の品質・味の生育診断として糖度計を使用した検査がされています。この糖度計による検査で測定するのは、糖分・アミノ酸・有機酸などの可溶性固形分の濃度です。
その検査において、この茶畑の芽は現時点で12度という理想的な濃度でした。この時点で7度や8度にしか高まっていなければ、窒素不足でアミノ酸などの蓄積が少ない状態であり、樹勢が低下してしまいます。逆に15度などと高すぎる場合は未消化窒素がたまった状態で、窒素過剰、塩基・リン酸の不足状態で植物の生育に問題が在る状態です。
こうした話を当たり前のこととして教えて下さる生産家の方の「茶」を扱わせていただくことは、本当に幸せであると改めて感じました。世の中には簡単で便利なモノがたくさんあります。昔からあるものも少しずつ変化しています。
しかし、私が扱わせていただく「茶」はそれとは反対のモノであると感じております。そして生産家の方々の「想い」を伝えることこそが私の大切な仕事であるとも感じております。そうした想いを込めて、今年の「新茶」をお届けさせていただきたいと存じます。